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スズメバチ
スズメバチによる刺傷事故は、ほとんどの場合山林やその周辺で起きています。
都市部や民家の周辺では意外に少ないんですが、冒頭の死亡事例のように民家のすぐ近くでも事故は起きていますので、普段の生活でも十分な注意が必要です。山の中では医療機関が近くにないために、手遅れとなるケースもあります。
スズメバチに刺されないためには、何といっても巣に近づかないことが第一です。山中ではスズメバチの巣を目視確認することはなかなか難しいのですが、多くの場合、スズメバチ自身が近くに巣があることを教えてくれます。
・飛んでいるスズメバチを見つけたら飛行コースを良く見きわめてください。
・急に藪の中に入ったらそこに巣がある可能性があります。
・身体の周りをスズメバチが飛び始めたら10m以内に巣があります。すでに危険ゾーンに踏み入れています。
・さらに近づくと、スズメバチが目の前に飛んできて、顎を打ち鳴らして「カチカチ」という警告音・威嚇音を発します。この音 はスズメバチの最後通告です。この通告なしに突然刺されることもあります。
・1回刺されると次は集中攻撃される可能性があります。直ちにゆっくり後退してその場を離れましょう。警告音が聞こえた 場合も同様です。
・スズメバチを追い払うために手を上げたり、急な動作をしてはいけません。外敵と認識され、それこそスズメバチの大群に 集中攻撃されることになります。
スズメバチはミツバチと違って毒針を刺しても死ぬことはありません。毒針はかんたんに抜けて、毒がある限り何度でも刺 すことができます。
9月〜10月に秋の山野で活動する場合には十分注意してください。11月ごろまでは気を抜かないことが大切です。
スズメバチの外敵は巣を襲って幼虫やサナギを食べる哺乳動物です。熊だという説があります。だから、毛皮の黒い色に攻撃を仕掛けてくるのだとも言われます。
人がスズメバチに刺されるのも、大概の場合は(黒髪がある)頭部です。また青色の服やズボンなどにも反応しますが、複眼のスズメバチには青色が黒っぽく見えるのでしょう。
一方で、黒い色は外敵の急所である目の瞳の色だとの説もあります。そういえば頭部の中でも、とりわけ顔面を刺されることが多いように思われます。私は子供の頃、アシナガバチの巣にいたずらをしてよく刺されましたが、刺された場所は大概は目の近くでした(瞳を刺されたことはありませんでしたが・・・)
スズメバチの攻撃を避けるためには白い帽子を着用して、服装もできるだけ白っぽい色にしておくほうがいいようです。

さて、スズメバチにさされた場合の処置ですが、次のようにします。
・刺された部位から(可能なら)毒液を素早く絞りだす。
・毒は水溶性なので水で洗い流す。
・すぐに病院に行く。

アレルギーがなければ数箇所刺されたくらいでは問題ありません。ただ、刺傷後早い段階(数分〜30分以内)で全身のじんましん、めまい、意識障害、呼吸困難などのアレルギー症状が見られる場合は危険ですので、できるだけ早く病院に行けるよう最善を尽くさなければなりません。
なお、昔からの民間療法でハチ刺されにはアンモニアが利くというのがありますが、これは真っ赤なウソです。ハチ毒はほぼ中性のため、アンモニア水(アルカリ性)での中和は無意味です。またオシッコをかけるといいとの説もありますが、これも単なるデマ。神話です。不快なだけで何の効果もありません。


毒蛇
「マムシは小型でおとなしく、ハブに比べたら毒性も低くて危険も少ない」一般にはこのように思われているのですが、それは正しくありません。じつはマムシの毒性はハブよりも強く、年間に毒ヘビの咬傷事故で死亡する人のほとんどが、マムシに咬まれて尊い命を失っています。

(写真提供:身近なカエル・ヘビ) 
■マムシ(ニホンマムシ)
ニホンマムシはクサリヘビ科の毒ヘビです。南西諸島を除く日本の各地に分布し、水辺や草むら、土手、山地、森林などあらゆる場所に生息しています。全長45-80cmほどの小型のヘビですが、毒性が強く、毎年3000人ほどが咬傷被害にあって、そのうち10名ほどが尊い命を落としています。死亡率は0.3%〜0.4%ほどです。渓流釣りや沢登りで岩場に不用意に手を突いたり、キノコ採りで落ち葉を素手で払うよう行為は非常に危険ですので十分に注意しなければなりません。


(写真提供:ハブの館)

■ハブ
沖縄諸島と奄美諸島に生息するマムシと同じクサリヘビ科の毒ヘビです。体長は最大で2mを越えるものがあり、山地や森林、平地、人家の周辺まで幅広い環境に生息しています。時にはエサのネズミを追って屋敷や家屋内にも侵入します。ハブ咬傷被害の約30%がこれらの民家敷地内で生じています。一番多いのが農作業中の事故で全体の50%に達します。
毒性はマムシよりも弱いのですが、体格が大型で、咬まれると大量の毒液が注入されるため危険です。直ちに病院にいって手当を受ける必要があります。

(写真提供:身近なカエル・ヘビ)

■ヤマカガシ
ナミヘビ科のヘビで、アオダイショウやシマヘビの仲間です。長い間無毒と考えられていましたが、1972年に中学生が噛まれて死亡する事故が起きてから、毒蛇として認識されるようになりました。
上あごの奥歯(後牙)と首筋の2箇所から毒液を分泌します。カエルが主食で水田や川、渓流近くに生息する。本来おとなしいヘビなので、捕まえたり誤って踏みつけたりしない限り咬まれることはありません。

ヘビの毒には、クサリヘビ科に代表される「出血毒」と、コブラ科に代表される「神経毒」があります。マムシやハブなどは出血毒です。
出血毒は唾液と同じ消化液が強力に進化したものです。タンパク質を溶かし血管組織破壊していきます。そのため咬まれるとすぐに激痛が襲い、内出血が拡大していきます。出血のため患部は腫れ上がり、ひどい場合には循環障害のため筋肉細胞が壊死を起こしてダメージをより深めていきます。手当てが遅れたり、咬まれた部位あるいは注入毒量によっては循環器全体や腎臓にも障害が広がって、ひどい場合には死に至ります。
一方、コブラやウミヘビなどのコブラ科の神経毒は、神経を麻痺させて相手を動けなくする効果があります。咬まれた時の症状は、しびれ、運動・知覚マヒ、呼吸困難などで、死亡率は出血毒よりはるかに高くなります。
死亡のリスクは神経毒のほうが高く、逆に出血毒は死亡リスクは低いものの細胞壊死による後遺症障害が残るリスクが高いといえましょう。
なお、ヤマカガシの毒は出血毒ですが、マムシやハブとは少し違っておもに血小板に作用するため、激しい痛みや腫れはあまり起こりません。ただ、血小板が破壊されるため全身におよぶ皮下出血、内臓出血がおこり、腎機能障害や脳内出血を引き起こすこともあります。
いずれにしても、毒ヘビに咬まれないことが第一ですが、万が一にも咬まれた場合にはできるだけ早く病院で治療を受ける必要があります。病院での治療は血清投与が中心になります。

野外救急法資料






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